現場ではたらく機械

パスカルの原理


建設機械が強いチカラで動く理由はいろいろありますが、その中でも特に大きなものが油圧です。

そして、その油圧のもととなっているのが「パスカルの原理」です。パスカル?よく耳にする言葉ですよね。そう、台風の勢力を判断するときの目安となるヘクトパスカルは気圧の国際単位ですけど、その名前の由来となったのがフランスの哲学者であり物理学者だったブレーズ・パスカル。
「人間は考える葦である」という言葉を残したことで有名なそのパスカルが発見したのが「パスカルの原理」です。

では、パスカルの原理とはどういったものか?

それは、「液体を入れて密閉した容器の一部に圧力がはたらくとその圧力が増えることも減ることもなくそのままの値で液体内のすべてに伝わる」という原理です。液体ならではの性質ですね。

下の図を見てください。pが加わった圧力です。


この容器が風船だとしましょう。風船の中に水を入れたもの、水風船ですね。1箇所に力を加えると他の部分がふくらみます。


これがパスカルの原理の基本です。

この原理を用いると「小さな力を利用して大きな力を生み出す」ことができます。

下の図がそれです。


左右両方ともにピストンです。それぞれに面積が異なります。左側のピストンの断面積が10平方センチメートル、右側が50平方センチメートルだとします。左側に100グラムの力を加えます。すると、右側にに伝わる力はは500グラムの重りを押し上げることができます。

この液体を油にしたものが油圧です。でも原理的には水でもOKですよね。なぜ油を使うのでしょうか?
答えは建設機械が使われる環境にあります。水は0℃より低くなると凍ってしまいますよね。逆に100℃を超えると沸騰し最後には蒸発してなくなってしまいます。とすると、建設機械が使われるようなキビシイ環境のもとでは、水ではちょっと無理がありますよね。さらに、油は金属が腐食するのを防いでくれるし、潤滑油の役目も果たしてくれます。油を使うからこそ、パスカルの原理が応用できるのです。

油圧で動く仕組み

油圧システムの心臓となるのは油圧ポンプです。それを動かすのはエンジンです。燃料タンクからの作動油を吸い込み、ポンプで圧力をかけて油を吐き出します。
その構造には様々なものがありますが、その代表的なものがギヤポンプです。ギヤポンプは2個の歯車がかみ合ったもので、作動油を歯車によって吸い込み側から吐き出し側に押し出す形式のポンプです。


ギヤポンプの構造

YANMER『油圧ショベル・ミニショベルの仕組み』より



この圧力をかけた油が、コントロールバルブ(油の流れる方向を決める装置)によって走行や作業をする部分に送り込まれます。走行や旋回をさせるのが油圧モーターで、作業部分を動かすのは油圧シリンダーです。油圧モーターや油圧シリンダーが動くことによって重機が動きます。だから重機の運転は、言い方を変えれば「油の流れをコントロールすること」だとも言えますね。

油圧で動く各部の名称

YANMER『油圧ショベル・ミニショベルの仕組み』より




建設機械が強いチカラで作業できる秘密。

それは油圧とその油圧を使い機械を動かす仕組みにありました。

油圧システムで動く機械は、世の中にたくさんありますが、やはり建設機械はその代表的なものですね。

参考サイト:YANMER『油圧ショベル・ミニショベルの仕組み』

参考図書:『トコトンやさしい建設機械の本』(宮入賢一郎、日刊工業新聞社)

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