現場ノート

国道55号を室戸岬から高知市方面へ走っていると、海岸線沿いにひときわ目をひくシルエットがあります。

空にそびえるワシントンヤシ。

「ドライブインなぎさ」です。

すらりと伸びたその幹を見るたびに、いつも不思議な感覚におそわれるぼくなのです。

10メートル以上あると思しき高さの割には極端に細い幹。

このフォルムで、あの強い風の中で、どうして立ちつづけられているのか?

なぜ折れないのだろうか?

なんでもその構造は、無数とも言えるほどの繊維の束でできている幹が、細いがゆえにムチのようにしなって全体で風のエネルギーを受け流し、それを支える強固なヒゲ根が幹をしっかりと地面に固定して、重心が高くなっても倒れないようなアンカーの役割を果たしている、とのこと。

で、ぼくはいつも思うのです。

これぞ極限のバランス。自然がつくり出した造形の妙と。

今月の安全パトロールめしは、そんなワシントンヤシを見上げながら入る「なぎさ」で、迷わずぼくが注文したのはオムライス。



これですよコレ。これぞオムライス。

どこまでも赤い(たぶん特製じゃない)ケチャップと福神漬に紙ナプキンで包んだスプーンを含めて、これぞ正統派のオムライスというビジュアルにまず感激。

おもむろにブツを割ると





おー

なんだこの断面は!

注目は表面。

チキンライスを包み込む卵の膜の衝撃的な薄さ。

まるでヴェールのようにライスをおおい、向こうが透けて見えるほどなのに、一切の破れもなく、カンペキにチキンライスを抱き込んでいます。

極限の薄さを実現させているのは、まごうことなく熟練の業です。

そんなことを思いながら、ワシワシムシャムシャと頰張っていると、知らず知らずのうちに、ワシントンヤシとオムライスの関連性について考察しているぼくがいました。

ヤシは自らの細い身体を柔軟にすることで、嵐のちからを受け流し、その存在を保っている。

オムライスの卵もまた、極限まで薄く、しなやかにチキンライスを包み込むことで、破れずにその役割を全うしている。

どちらにも共通しているのは、「しなやかさ」と「極限」。

それによって、実存を主張し、機能美を獲得している。

剛をもってすべてを跳ね返すのではなく、柔をもって力をいなし、自らの形を保つ。

青く澄み切った夏空のもと、高くそびえるワシントンヤシと皿の上に結集された技術のハイブリッドは、ここでなければ体験することができません。

ん?

そんな大げさな?

いやいやマジで感激しました。

奈半利町「ドライブインなぎさ」のオムライス。

いいですよ~~ ホントに (^O^)/

(みやうち)

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