現場ノート



雨です。

しかも、この季節にはめずらしいほどの強い雨です。

ということで

ふだんは屋外で行う全体朝礼も部屋のなかで。

「昼ごろまで雨が降るから

それをあたまに入れて行動を」



という社長のことばを受け

参加者全員で

「ご安全に!」



それぞれの現場別のミーティングへと入る脇で

降雨情報アプリ「アメミル」をひらいて

いつごろまで雨が降るのかを確認するわたし。

「あがるのは13時すぎやな」

とつぶやくと

となりにいたユーゴくんがのぞきこんで

「太平洋じゃないがですか?」

「そこじゃないって、この二重丸が現在地」

「いや、それはわかってますけど、ここにフィリピン海って」

「あらホンマや」




見るとたしかに

室戸岬の南沖に「フィリピン海」とおおきく書かれてます。

それをふたりで確認してまたユーゴくん。

「フィリピン海じゃなくて太平洋でしょ」

「そうよ、太平洋よなあ。なんでフィリピン海ながやろ?」

「このアプリ、どこの国のひとがつくったがですか?」

「フィリピンじゃないか?」

ガハハとおおきく笑ってその場はおさまったんですが

気になってたまらないわたしは

さっそく調べてみることに。

国際水路機関(IHO)が1953年に発行した

『大洋と海の境界(第三版)』ではこう定義されているようです。

******

フィリピン海
フィリピン諸島の東岸沖にある、北太平洋の海域。境界線は
西側は
東インド多島海英語版)の東端(注:スル海セレベス海モルッカ海)、南シナ海及び東シナ海の東側境界線。
北側は
九州の南東岸、瀬戸内海の南端(注:四国)・東端(注:淡路島)及び本州の南海岸。
東側は
日本と小笠原群島火山列島及びマリアナ諸島を結ぶ海嶺(ridge)によって。これらはすべてフィリピン海に含まれる。
南側は
グアム島ヤップ島パラオ諸島及びハルマヘラ島を結ぶ線によって。

******

ということはつまり

伊豆半島より西の西日本の南方で南西諸島より東の海は

ぜんぶフィリピン海ということに。




また、この定義によるとフィリピン海は北太平洋の一部とされていますが、

同じ書物の北太平洋の定義からはフィリピン海が除かれているらしく、

狭い意味での北太平洋にはフィリピン海は含まれないようです。

さっそく知らせねば・・

現場へ出ていこうとするユーゴくんを呼び止め

さっき知ったばかりの知識をぜんぶ伝えました。

「え?そんなん社会科で習わんかったですよ~~」

「オレもはじめて知ったわ」

ということは・・・

ふたりで顔を見合わせます。



「オマエが海へ釣りに行くときは?」

「ちょっとフィリピン海へ行ってくらあ」

「おお、そこのフィリピン海か?」

「そうそう、ほんなら行ってくるで、フィリピン海」

また顔を見合わせ

ガハハと笑ってハイおしまい。

とはいえ・・・

四捨五入をすると七十歳になる年まで生きてきても

知らないことだらけなのだなあ~オレは

おのれの無知を恥じ入るばかりの辺境の土木屋

65歳と3ヶ月の春なのでした。

(みやうち)



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