現場ノート



トラクターが走行するうしろを

腰をかがめ地面を見ながらついていく人ふたり

何をしているのでしょうか?

探しもの?

そうそう

落語にはこんな話がありますね。


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 どん底生活で失業同然の熊五郎。

 きれいな着物を着て、うまいものを食って、女に惚れられて、働かなくても飯がくえるような、いい商売はないものかと思いを巡らすうち、ふと気になったのが、長屋の隣に住んでいる独り者。 ついぞ商売を聞いたことがない。 見るからに羽振りがよさそうなので、ワリのいい仕事をしているに違いないから、ひとつ談判して、腕づくでも仲間にしてもらおうと物騒なことを考え、隣へ出かけた。

 前々からうさん臭いとにらんでいたので、「てめえは昼間はグーグー寝ていて、夜出かけて朝帰ってくるからには、”ド”のつく商売だろう。さあ白状しねえ」 とカマをかけて脅すが、「自分の商売は素人には説明しにくい商売だ」、「人殺しと言い立てるぞ」 と脅迫して、ようやく聞き出したところによると、男は地見屋。
 つまり、文字通り地面を見て歩き、金目のものを拾って自分のものにする「拾い屋」。
 お上の目がヤバイが、腕によっては元手いらずの上、相当もうかると聞き、熊は喜んで、「俺もやってみるから一口乗せろ」 と頼むが、「組合」の加入金兼技術の指導料五十銭が前金でいるとのこと。 熊公は一文なしなので、強引に後払いということにさせ、秘訣を無理矢理聞き出す。男の教えたところでは、現ナマは夜中から夜明けにかけてが一番拾いやすいという。
 「仲間うちでは、五銭でも現金を拾うと酒を呑んで祝うんだよ。悪い月でも三、四十円、運がよければ百円以上拾うね。そうすると、仲間に赤飯を配るんだ」・・・・

[落語「地見屋」の舞台を行く]より)

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といっても現実には、そうそううまい話があるわけもなく

たまさか落とし物を拾うこともないではないでしょうが

だからといって

それを商売にする人など存在するはずもありません。

といっても写真の人たちがしているのは

れっきとした仕事

大真面目で地面を見ながらトラクターのあとをついて歩いているのです。

その作業の名は石礫除去

石の礫と書いて「せきれき」と読みます。

ほ場整備には必須、付きもの、マストな作業なのです。

ほ場整備工事の流れをざくっと説明すると

表土剥ぎ取り

(田畑の表土にあたる部分をはぎとる)

基盤切盛

(土を切ったり盛ったりして田畑の表土の下の面をつくる)

畦畔築立

(あぜ、をつくる)

畦畔整形

(あぜ、を整える)

基盤整地

(表土の下の面を均して仕上げる)

表土戻し

(まとめて仮置きしていた表土を戻す)

表土整地

(表土を均して仕上げる)

田面耕起

(田畑を耕す)

となるのですが

このうち

基盤整地と田面耕起のあとには

土の中に混ざった石を拾う作業

つまり石礫除去が入ってきます。

特に

表土を耕して土が起こされる際には石礫が発見しやすいので

写真のように耕起砕土をするトラクターのあとをついて行くというわけ。

といっても

石を拾うのがこれでお終いかというとそうでもなく

またしばらくすると

土中に埋まっていた石が浮かびあがってきて・・・

(実際には浮かぶはずもないのですがホントにそんな気になる)

工事完成までに何度も何度も石を拾う

ということになり

ほ場整備工事が施工業者から嫌われる一因とも言われるほどの難儀な作業でもあるのです。






たかが石

されど石

とはいえ石

やっぱり石

かくして今日も

ほ場整備工事のマストタスク

石礫除去はつづきます。

(みやうち)

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