「土木工事1日体験2026」のレポート、「その3」は番外編です。
ぼくたちの業界ではたらく女性のことを、ドボジョなんて呼んだりしますよね。では、ジオジョって呼び名は聞いたことがありますか?
ドボジョのドボは土木のドボ、それに対してジオジョのジオは「ジオ(Geo=地球・土地)、そのジオと女子のジョを組み合わせた呼称がジオジョで、地学系の女性全般をあらわすことばなんだそうです。
で、そのなかでも、対象をもっと狭めて、地層、岩石、鉱物などに特化して愛好する女性のことを呼び表すことばが「地質女子」。
そう、賢明な読者さんはもう気づいたことでしょう。
今回の催しに参加してくれた人のなかで唯一の中学生。彼女が地質女子だったんです。
現場に足を踏み入れた彼女、現在いくつも稼働している北川道路工事のほぼ全部で発生する土砂や岩砕を捨てる場所となっているその地を見たとたん、キラキラと目が輝いたのをじっちゃんは見逃しませんでした。
目の前に転がる数多の石を指さしながら、うれしそうにお母さんに語りかけています。
なにを話しゆうがかな・・・聞き耳を立てるぼくに対して、お母さんが教えてくれました。
「この子、地質が大好きなんですよ」
「へぇ~~めずらしいですねえ」
ですが、目の前にいるのは中学1年生です。いきなりむずかしい言葉を使うのははばかられます。といっても、わざわざ「地質」というワードで表現するということは、なんだか只者ではなさそうな感じもします。
瞬時にそんなことなどを脳内に巡らせながら、質問してみました。
「専門的な言葉を使っていいですか?」
当人とお母さんが、同時に、しかも自信たっぷりにうなずいたような気がしました。
「ここの地層は四万十帯って言って・・・特徴は砂岩の層と泥岩の層が互層って言って混ざり合うちゅうところ・・・」
そのあとの態度や言葉が、「自信たっぷり」というぼくの受け取り方が誤りではなかったことを証明しました。
たかだか「四万十帯」という言葉を使うのに躊躇した自分を反省したほどに、彼女は博識だったのです。
そしてその知識は高知、いや四国を飛び越えて遠くヨーロッパはイタリアまで。高知の地層とイタリアのそれの類似点を研究したスライドをお母さんから見せられるにおよんで、
「こりゃワシよりはるかに上じゃわい」
じっちゃんぶっ飛んでしまいましたが、せっかくぼくらのホームへ来てくれているんですもの、地質女子が喜ぶような現地ならではのモノを持って帰ってもらおうと、キレイに敷き均しをされた盛土の上を歩くと、すぐにそれは見つかりました。さっそく手頃なものを掘り出し、採ってきた石片を彼女の前に並べます。

「コッチ(右)が泥岩(でいがん)でコッチ(左)が頁岩(けつがん)」
彼女がすぐさま向かったのは左、ケツガンの方です。どうやら、ケツガンというその音の響きは彼女の脳内で何のためらいもなく頁岩という漢字に変換されているようです。
「これが頁岩…キレイ」

なんの興味もない人から見たら、泥がついた岩のカケラにすぎません。それを「キレイ」だなんて…やはり只者ではありません。
黒色頁岩は、地中にあるフレッシュな状態では、キラキラと輝いて、とても美しいものです。ところが一方でそれは風化しやすく、水分を含もうものなら、ボソボソになってしまう。
ですから、そのキラキラを目にする機会は、ぼくたちのようにそれを相手にした仕事をしている者ならいざ知らず、一般の方にとってはそうそうないものです。
そんな雰囲気だけでも味わえる頁岩片はないものか、と掘り起こしたはよいのですが、いかんせんそれには当り前のように泥がついていて…というのに、その泥のなかの本質を、瞬時にして見破ってしまった彼女。いやはや中1ジオジョ恐るべし、です。
そしてその数時間後、昼食を食べようと移動した先の柏木IC現場事務所で、
ガタン!
大きな音がしたので、一同ビックリしてその方向に目を向けると、その音源は彼女。どうやら、頁岩片を磨いていてテーブルに落としてしまったようです。
あらあら、そんなにも喜んでくれたんですもの、もっとサービスしなければ・・・昼食後、お母さんを交えて、モネの庭で使った大量の花崗岩の話などをしつつ、たしかあのへんへ行けば見られるはず・・・と、現地調査で確認したあと、事務所に帰って切り出します。
「すぐそこで砂岩泥岩互層がおもてに出ちゅうところがあるよ、行く?」
「え✨️行きます!」
現場事務所を出て歩くこと3分ほど、表面に苔や短い草などが生えているものの、しっかりと地質が確認できる場所に来ると、
「こんなふうにロトウしているところって、けっこうあるんですか?」
そんな質問に混ざり込んだ言葉に、じっちゃん思わず笑いながら答えました。
「いやね、露頭(ろとう)って言葉がまずアタマに浮かんだがやけんど、もっとわかりやすい言葉にせないかんと思うて・・・露頭しちゅうところ、この奥へ行ったらどっさりあるでぇ、機会があったらぜひ行ってみて」
いやぁ~何度も言いますが、中1地質女子恐るべし。
機会があれば、イタリアと高知の地質について、今度はぼくが教わりたいな、などと真剣に思うじっちゃんなのでした。
ちなみに彼女が一等好きな石は、蛇紋岩なのだそうです。
地質女子の未来に幸あれ!
(みやうち)
