ずいぶん前のことですが
九州のある県で知り合った某準大手ゼネコン出身者にこう言われたことがあります。
「1億円以下は雑工事ですから」
ちなみに高知県が発注する工事で
当社が単独で入札に参加できるのは税込み1億2,500万円が上限なので
彼の理屈からいけば
当社などは雑工事しかできない雑会社ということになり
そこで番頭を務めるぼくは雑技術屋になるのでしょうね。
で
それを聞いて当時のぼくは思いました。
「わかってねえなコイツ」と。
官民を問わず建設業界にはたくさんの知り合いがいるぼくですが
きちんとした人は
会社の規模の大小や工事金額の多寡で評価や判断をくだすことがありません。
ですから
吹けば飛ぶよなこの辺境の土木屋にもそれなりの存在価値を認めてくれて
対等に付き合ってくれますし
年長であるぼくを立ててくれる人が多かったりもします。
なので
「わかってねえな」
と思うと同時に
「かわいそうなヤツだなぁ」
と感じたりもしました。
と
そんなことをぼくに思い出させたのは
きのうの現場報告に載った奈半利町内の修繕工事ふたつ。
ひとつは小学校の入口にできる水溜りを処理した仕事。

そしてもうひとつは
水が流れにくい町内の側溝の補修。

何を隠そう
(なんにも隠してませんが)
駆け出しのころのぼくは
町内の田んぼや畑
道路や水路の補修修繕がその主たる仕事で
そこで学んだことがその後にどれだけ活かされたかを
身を以て体験しています。
1億円が雑工事ならば
それこそ爪の垢ほどの
ちいさなちいさな仕事ですけれど
決して侮るなかれ。
そこにあるのは地域の人たちにとっての困りごとを解消するという土木の役割です。
そして、どうやったらそれが実現できるのか
どの方法を採用するのが最善なのか
それを考え実践することから
気づくことがあり
また
学ぶことがあり
そういうちいさな積み重ねが
自分の血となり肉となると同時に
地域との信頼関係が醸成されていくのもそういった営為の積み重ねからでもあります。
なんてことを考えていたら
またあの某準大手ゼネコン出身者の彼の顔が浮かんできて。
「わかるかなぁ、わかんねぇだろなぁ」
笑いながら独りごちるぼくなのでした。
(みやうち)