アルキメデスの鉤爪(かぎづめ)
紀元前200年代、つまり今から約2200年前の古代ギリシャ。
シチリア島南東部のシラクサというところに一人の天才がいました。
ひと口に天才といっても、そこらへんでたま~にあらわれる天才から、世界史上に残るほどの天才まで、そのランクはさまざまですが、その天才は正真正銘、超がいくつもつくほどの天才でした。
彼の名はアルキメデス。
どうしてクレーンが重いものを吊り上げられるのか?
それはこのアルキメデスの発明によるものなのです。
ローマとカルタゴとが戦った第二次ポエニ戦争のさなか、ローマ軍約2万人がシラクサに攻め込んできます。
シラクサは、街を守るため海に面したところから街全体を城壁でとりかこんでいました。
海からやって来たローマ軍は、まずその城壁に船を近づけ、はしごを使って壁を越え、街の内部へと侵入する作戦でした。
そこでアルキメデスがローマ軍撃退のために考案したのが、のちに「アルキメデスの鉤爪(かぎづめ)」と名づけられたものでした。
接岸したローマ軍の船は、アルキメデスが考え出した鉤爪によって転覆させられ、ローマ兵はシラクサに上陸することがかなわず、海側からの攻撃をあきらめざるを得なかったのです。
そのアルキメデスの鉤爪とはどのようなものだったか。
まず、城壁の内側に立つ大きな柱の先に長い木の棒がついていました。
棒の先端(海に出ている部分)からは、海面に向かってロープが垂らされており、ロープの先には鉄の爪がついています。
木の棒のもう一方、陸側にもロープがついていて、こちらは滑車を使って引っ張るようになっていました。
ではそれをどのようにして使ったのか。
口で説明しても上手く伝わらないようですね。
わかりやすい動画があったのでそれをご覧ください。
21世紀を生きる現代人なら、この兵器が「テコのしくみ」と「滑車のしくみ」を組み合わせてできたものだということがわかるはずです。
クレーンのヒミツは滑車のしくみ
滑車というのは、車の溝にロープやチェーンをかけて荷物を引きあげる道具です。
軸が固定されたものが「定滑車」、固定されていないものが「動滑車」、このふたつを組み合わせたものを「複合滑車」とか「組み合わせ滑車」と呼びます。
(『中学理科ポイントとまとめと整理~中3物理【滑車を使った仕事】』より)
定滑車は力の方向を変えるだけなので、荷物を引きあげるには荷物の重さと同じだけの力をかける必要があります。
(『中学理科ポイントとまとめと整理~中3物理【滑車を使った仕事】』より)
動滑車は固定されていないので荷物ごと滑車が持あがります。
(『中学理科ポイントとまとめと整理~中3物理【滑車を使った仕事】』より)
両方で引っ張るようになるので持ちあげる力が半分で済みます。
複数の定滑車と動滑車を組み合わせると、さらに小さな力で荷物をあげることができるようになります。
(『中学理科ポイントとまとめと整理~中3物理【組み合わせ滑車】より)
定滑車と動滑車を2つずつ組み合わせたこの例では、荷物の重量の1/4の力で引きあげることができます。
この仕組みを利用したのがクレーンなのです。
ヨーロッパでは、今から600年ほど前から滑車のしくみを利用してクレーンをつくり、船から荷物を陸揚げするのに使われており、それが現代のクレーン車へとつながっています。
つい先日、当社が担当した工事で、すべての仕事を終えて次の工事まで待機をしていたクローラークレーンを見てみましょう。
滑車が組み合わさっているのがわかりますよね。
重い荷物を軽々と吊り上げるクレーン車。
そのヒミツは滑車のしくみにありました。
そして、そのもととなったのがアルキメデスの発明。
冒頭に紹介したシラクサ攻防戦は、アルキメデスの奮闘むなしく、ローマ軍は上陸、シラクサの街は占領されてしまいました。
アルキメデス宅にローマ兵が入ってきた時、彼は砂盤の上に描いた図形の上にかがみこんで、なにやら考え込んでいたといいます。
その人がかの有名なアルキメデスだとは知らないひとりの兵隊が名前を聞きましたが、没頭していたアルキメデスはそれを無視。兵士は腹を立てて彼を殺しました。
アルキメデス最後の言葉は「私の円をこわすな!」だったそうです。
ん~~~
アルキメデス、かっこいい!
以上、今回の『現場ではたらく機械』は、クレーンが荷物を吊り上げるヒミツでした。
ではまた次回。
参考サイト